事例② 参謀型のバックヤード支援

業務提携しているベンダとの関係修復に際して、裏方からの支援を行った事例です。

 事案   不動産コンサルのA社は、この分野に長い経験のあるシステムベンダのB社と組み、共同で物件提案システムのベースを開発しました。そして、A社がエンドユーザと契約して行ったコンサルティングの結果に基づいてB社に同システムのカスタマイズを再委託する、という業務提携で数件の実績もありました。しかし、超過コストや品質のトラブルが続き、提携解消の可能性も出てくる中で、ベース・システムの著作権問題にまで発展してしまいました。A社としては、当面の問題を解決しないことにはプロジェクトの採算が望めないことから言うべきことは言いたい一方で、B社以外には十分な力量を持ったベンダはいないため、本格的な紛争化は避けたいという悩みがありました。そこで、調整・交渉にはA社自身が臨む前提で、ITSにバックヤードでの支援を依頼しました。

 解決  ITSは、超過コストの負担関係、品質問題の責任関係、著作権の帰属について、資料とヒアリングに基づき一定の分析を行った上で、提携関係を維持・発展させることを前提に、双方の担当役員及びプロジェクト責任者が関わり、週1×6回で基本線を出す「戦略会議」を持ちかけるよう提案しました。B社も応じたこの会議では、重要問題のみ過去の振り返りを行って、将来の提携関係のベース作りに注力しました。その結果、提携関係におけるB社の責任部分を将来の委託条件に反映させた確認文書(基本合意書)の締結に至りました。ITSは、この間、提出された資料の分析、戦略会議のプランニング、事前打合せ、事後打合せ、2回の経営会議への出席、確認文書の起草と調整、そして、合意後も新たな提携関係が安定化するまでの間若干の継続相談を行いました。

 ポイント  訴訟に至ってしまえば弁護士が前面に出て訴訟追行することになりますが、それ以前の紛争段階では、実は弁護士が表に出ない方が解決の糸口を掴みやすい場合があります。(弁護士にとってはやや残念なことですが)当事者同士の方が、対決姿勢が鮮明に現れず、また、金銭や「やる/やらない」といった単純な「交渉」ではなく、技術的課題や将来展開など、具体的な「話し合い」をする余地が大きいためです。そうした場合でも、法的な部分でのミスジャッジを防いだり、駆け引きの部分での助言を得たりするため、「参謀」としての弁護士からバックヤードでの支援を受けることは有益です。これによって、紛争解決に専門的なノウハウを取り入れて質を上げながら、コストの低減を図ることができます。

smart_display和解の基本合意書の例

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。