IT訴訟/調停

 IT訴訟・調停は、IT紛争について、依頼者の代理人として相手方との訴訟や交渉に当たる、弁護士として最も基本的なサービスです。例えば、次のような場合にご利用頂けます。

・システム開発が頓挫してしまったので、支払済みの代金と損害賠償を請求したい
・販売中のパッケージソフトが他社の著作権を侵害している、という内容証明が届いた
・納品したネットワーク・システムの品質が悪いとクレームをつけられ、交渉が難航している

 IT紛争の場合、その解決手段には多様なものがあります。裁判所やADR機関での訴訟や調停(IT紛争を専門的に取り扱う専門廷もあります。)のほか、裁判所外での任意の交渉、あるいは当事者同士の話し合いにバックヤードから支援に入るという選択肢もあります。それぞれ、費用、期間、解決可能性などに違いがありますので、紛争の性質や置かれた状況などから、最も事案にマッチする解決手段を探ることからスタートします。
 紛争類型としては、システム開発系の紛争のほか、インターネットや電子商取引でのトラブル、IT関係の事件・事故、発信者情報開示などがあります。著作権や不正競争防止法関係では、民事だけでなく刑事告訴も視野に入れています。

IT訴訟/調停では、アイティーエス法律事務所のIT弁護士が、依頼者の代理人として相手方との訴訟や交渉に当たります。

裁判所での訴訟から専門調停に移行して解決した事例です。

 事案   システムベンダのA社は、通信機器メーカであるB社から、ERPパッケージをカスタマイズ込みで7500万円で受注しました。途中でカスタマイズが当初の想定を超えて膨らむ見込み違いはあったものの、約10か月の期限内に納品、B社の検収も完了しました。ところが、本稼働の直前に、B社は委託倉庫での在庫管理にまったく対応できていないことが判明したとして、契約を一方的に解除してきました。A社としては寝耳に水の話であったので、部門長と担当役員が特命担当となり、B社と計10回に及ぶ協議を重ねましたがまったく進展せず、ITSに訴訟を委任することになりました。

 解決  既に当事者間の協議が尽くされた後だったため、ITSでは早々に訴訟提起したうえ、専門調停に移行するよう裁判所に働きかけました。B社が解除の理由としている在庫管理の問題が鍵となると考えたためです。この点を、6回の調停期日を使って互いに主張、立証したところ、開発が始まる直前にB社が吸収合併した会社の倉庫での管理方法が当初想定のものと大きく異なること、その点B社の担当者はパッケージのオリジナル機能で対応可能と考えていたこと、さらに、A社からの問合せに対しても機能自体不要と回答していたことが分かりました。調停委員からは、A社の勝訴ベースで考えざるを得ないとの見解が示され、その結果、B社が6500万円を支払う和解としたうえで、新たに2500万円で問題の在庫管理方式への対応を行う契約を別途締結することになりました。

 ポイント  B社が解除の理由としていた在庫管理の問題は、開発に入ってから殆ど話に上っていなかったため、その具体的な内容ややり取りの経緯が解決の鍵となることは明らかでした。そのため、訴状もその点に絞って争点を明確にしたうえ、専門調停への付調停の希望を出しました。当事者間の協議が不調で裁判にまで持ち込まれた場合、本件のように、(執行ができない)将来の関係が予定された合意がなされることは稀です。本件の場合は、専門調停の中で、責任関係がかなり明白に現れ出たこと、問題の在庫管理方式への再カスタマイズが見通せる程度に技術的な検討も行われたことから、このような解決が可能となったものです。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。

提携先との関係修復に際して、裏方からの支援を行った事例です。

 事案   不動産コンサルのA社は、この分野に長い経験のあるシステムベンダのB社と組み、共同で物件提案システムのベースを開発しました。そして、A社がエンドユーザと契約して行ったコンサルの結果に基づいてB社に同システムのカスタマイズを再委託する、という業務提携で数件の実績も持っていました。しかし、超過コストや品質のトラブルが続き、提携解消の可能性も出てくる中で、ベース・システムの著作権問題にまで発展してしまいました。A社としては、当面の問題を解決しないことにはプロジェクトの採算が望めないことから言うべきことは言いたい一方で、B社以外には十分な力量を持ったベンダはいないため、本格的な紛争化は避けたいという悩みがありました。そこで、調整・交渉にはA社自身が臨む前提で、ITSにバックヤードでの支援を依頼しました。

 解決  ITSは、超過コストの負担関係、品質問題の責任関係、著作権の帰属について、資料とヒアリングに基づき一定の分析を行った上で、提携関係を維持・発展させることを前提に、双方の担当役員及びプロジェクト責任者が関わり、週1×6回で基本線を出す「戦略会議」を持ちかけるよう提案しました。B社も応じたこの会議では、重要問題のみ過去の振り返りを行って、将来の提携関係のベース作りに注力しました。その結果、B社の責任部分を将来の委託条件に反映させた確認文書(基本合意書)の締結に至りました。ITSは、この間、提出された資料の分析、事前打合せ、事後打合せ、2回の経営会議に出席、確認文書の起草、そして、事後も若干の継続相談を行いました。

 ポイント  訴訟に至ってしまえば弁護士が前面に出て訴訟追行することになりますが、それ以前の紛争段階では、実は弁護士が表に出ない方が解決の糸口を掴みやすい場合があります。(弁護士にとってはやや残念なことですが)当事者同士の方が、対決姿勢が鮮明に現れず、また、金銭や「やる/やらない」といった単純な「交渉」ではなく、技術的課題や将来展開など、具体的な「話し合い」をする余地が大きいためです。この場合でも、法的なミスジャッジを防いだり、駆け引きの部分での助言を得たりするため、「参謀」としての弁護士からバックヤードでの支援を受けることは有益です。これによって、紛争解決に専門的なノウハウを取り入れながら、紛争解決費用の低減を図ることができます。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。

営業秘密の侵害について、相手方との直接交渉により示談した事例です。

 事案   精密機器のメーカーであるA社は、ある時インターネットのブログ上に、機密としていた自社ノウハウの一部が掲載されていることを発見しました。ブログの内容やその他の調査情報から、この1~2年にA社を辞めた元従業員のうちの誰かが、自ら関与していた技術を持ち出して、これをベースにした製品開発を手掛けるベンチャーを設立しようとしているらしいことが分かりました。明らかにA社の営業秘密の侵害で、もし製品が販売されてしまえば、A社の権利利益が大きく害されてしまいます。そこで、A社は早期解決のための示談交渉をITSに依頼しました。

 解決  ITSは、まずブログ運営会社に対し、同社の規約に基づく記事の削除を依頼しました。幸か不幸か、営業秘密の記載が明白だったため、裁判外の請求で記事は直ちに削除され、ひとまず二次漏えいを止めることができました。次に、侵害者を特定するため、問題のブログの発信者情報の開示を求めました。これについては任意の開示は得られなかったものの、すぐ仮処分に切り換えて申立てたところ、開示されたIPアドレスが元役員のBから来たメールの送信元と一致したため、直ちに事実上の特定ができました。ここまでの調査結果を基に、B及び、最終的にはBと組んでベンチャーを企画していたCも交えて直接交渉し、結局、退職金全額相当の損害賠償金と、ノウハウの使用は許容することと引き換えの割増ロイヤリティーを支払う内容の示談で決着しました。

 ポイント  A社の営業秘密を利用した製品が市場に出る前の解決が急がれた事案です。そのため、出来るだけ裁判外での早期進展を目指しましたが、その意味では、Bがブログで得意げにノウハウを開陳していたことや、電子メールのアドレスとの一致から1回の開示請求でBを特定できたこともあり、想定以上の早期の示談が実現できました。示談において、Bらによる営業秘密の利用を認めたのは、製品自体はA社のビジネスと競合しなかったこと、製品開発はほぼ完了しておりその販売を許した方が賠償等の原資を確保し易かったこと、自身に利用させた方がノウハウの二次流出の抑止になると考えられたためです。ベンチャー立上げを願っていたCも加わったことにより、交渉は非常に有利なビジネス交渉の様相を呈していました。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。