セカンドオピニオンは、IT紛争に既に弁護士がついている場合に、IT法の専門的観点から、「第二の意見」を提供するものです。医療分野で患者が主治医以外の医師に意見を求め、一つの見方、一人の専門家に身を委ねるリスクを減らし、より良い「治療=解決」を目指すのと同じです。例えば、次のような場合にご利用頂けます。

  • 現在の訴訟方針が、IT法の専門的観点から妥当かどうかチェックしておきたい
  • 交渉や訴訟追行にあたって、IT法の専門的観点からの策を補充・強化したい
  • 顧問弁護士に正式に相談する前に、紛争についての大まかな見通しを持っておきたい

 セカンドオピニオンは通常、進行中の訴訟への対応など「ファーストオピニオン」があることが前提となりますが、「初診」的な紛争の見立てを行うために利用することもできます。また、単に意見や対案を示すだけでなく、既に動いて頂いている弁護士を積極的にバックアップすることも可能です。

セカンドオピニオンでは、アイティーエス法律事務所のIT弁護士が、IT法務の専門的観点から第二の意見を提供します。

クラウド型サービスに関する訴訟の進行について助言した、典型的なセカンドオピニオンの事例です。

 事案   大手旅行会社であるA社は、B社のクラウド(SaaS)型ウェブ解析サービスを導入しようと、1か月間の試用により、同サービスの機能や性能について評価を行いました。しかし、同サービスはA社の要求する解析レベルを満たさなかったので、結局、導入は断念しました。ところが、半年ほど経って、試用の際のIDが継続的に使用されているので規定により代金請求するとの通知が来ました。A社にはまったく身に覚えがなかったので断ったところ、間もなく提訴されました。A社は知り合いの弁護士に訴訟委任して、3回ほど期日が経過しましたが、システムの技術的な部分についてどのようなやり取りがされているのか、十分に理解できず、不安に感じたため、ITSにセカンドオピニオンを求めました。

 解決  ITSでは、技術的な関連資料と共に、それまでの訴訟資料をチェックしました。サービス約款の有効性、ID管理の責任関係など主な論点について、概ね正確な主張立証がなされていましたが、最大の争点は、第三者によるIDの不正利用の有無であり、この点についての技術的な説明が足りていない点のあることが分かりました。そこで、その旨を代理人弁護士を含めて報告すると共に、IDの不正利用の技術的な説明をした報告書を提出しました。その結果、6回目の期日までに、B社自身が第三者の不正利用であることを理解するに至りました。他方、A社のID管理にも若干の問題があった可能性が判明しましたが、サービスの性質上、B社には実損が殆どなかったことから、ゼロ和解の結果となりました。

 ポイント  この事案は、人違い型のいわば「えん罪」でしたが、サーバでのログ管理が不十分であったため、使われていたIDは分かっていたものの、現実の利用者(サーバ)の特定が出来ていないまま、訴訟にまで至っていました。もっとも、残っていたログその他の通信記録とネットワーク構成から、おおよその推測(利用していたのがA社のサーバなのか否か程度の特定)は可能であったことから、残りの期日ではその点の主張立証が行われるよう、誘導したのが奏功しました。この事案ではB社も被害者であり、何ら悪意があったわけではありませんが、訴訟を提起してしまった以上、ともかく考えられる主張立証はすべてせざるを得ない状況でした。そのような中で論点を誤って責任論などに深入りすると、おかしな方向に流れる危険があった事例です。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。

ネットワーク敷設に関する調停で顧問弁護士の代理人をサポートした、セカンドオピニオンの事例です。

 事案   放送事業者であるA社は、放送現場でのネットワーク敷設を元グループ会社のB社に依頼していました。今回は、大規模イベントの放送現場でしたが、急な計画変更が原因で放送スケジュールにまで影響する遅延を来してしまいました。その事後処理のため、互いに顧問弁護士が間に立ち、(元グループ会社であることもあって)「是々非々」による交渉が進められました。ただ、損害額が大きかったため、中立の「ジャッジ」を入れるという意味で、間もなく裁判所の調停に場を移しました。このような中、A社の顧問弁護士はこれまでシステム紛争の経験がなく、調停での審理のベースとなる技術論でB社の主張に十分に対抗できないのではないかという不安を抱えていました。そこで、ITSにセカンドオピニオンとしての支援を求めました。

 解決  調停では、前提となるネットワーク要件と作業結果、現場での双方の作業及び管理などについて争点表が作成され、おおよその責任関係をはっきりさせてから、負担関係を協議するという手順で進められていました。ITSは最初に、争点のうちネットワークやプロジェクトマネジメントに係わる部分について、A社から資料の提供を受けて責任に結び付く事象を抽出・分析し、審理での主張のベースになるレポートを作成しました。調停は8か月ほどかかりましたが、ITSはその間継続してA社の代理人をサポートし、B社からの主張の評価や、対抗案の作成などを行いました。その結果、当初希望した満額には及ばなかったものの、その8割ほどの補償を得ることができました。

 ポイント  以前はグループ関係にあり、現在も相当な取引関係が残っていたことから、双方の了解済みで調停に移ったという、かなり珍しい事案です。そのため、調停に場を移してからも、裁判所外での交渉からの引き続きで、事実を解きほぐし、原因を明らかにするような形で行われました。その意味で、補償額が幾らになるかという結論だけでなく、内容的な話し合いの過程に重点が置かれていたと言えます。そのような中では、事案の振り返りとして、真摯な技術的分析・検討が重要になります。このような課題に対処するため、B社側では、代理人のほか親会社の技術者や外部のコンサルが関与していたようでしたが、ITSはA社側でA社担当者と共にその立場に立ったわけです。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。

IT訴訟の弁護団に加わり、IT技術者と共同でプログラム・ロジックに関する技術立証を行った事例です。

 事案   総合IT商社であったA社は、自社ポイントの発行、他社ポイントとの交換サービスの運営、電子マネーやゲーム内通貨の取扱いなどを足掛かりに、クレジットカードや仮想通貨とも連携するフィンテック・サービスへの進出を企画していました。そのような中、電子マネー交換システムのダウンが原因で、交換手続中であった電子マネーが全て消失するという事故が発生しました。消失した電子マネーは総額で3億円程度と見積もられましたが、直ちにその全額を賠償する方針を利用者に示しました。ところが、システムの不備で対象金額に関する確実な記録が存在しなかったことから、利用者から疑念の声が上がり、大口の利用者から提訴されてしまいました。訴訟自体は、敗訴額の上限がおおむね想定できるものであったため、当初は粛々と進んでいましたが、訴訟の追行中に別の重大な問題が生じたため、ITSが弁護団の一員に加わることになりました。

 解決  重大な問題とは、訴訟の中で証拠として提出した交換残高把握のためのプログラム・モジュールに、不正ロジックが組み込まれているのではないかと疑われたことです。相手方は、これを交換残高を意図的に縮小するための詐欺ロジックであると攻撃し、請求額を大幅に拡張したうえ外部の報道にも流しました。このような主張が認められてしまうと、高額の敗訴金を負担するばかりでなく、フィンテック事業者としての信用が著しく傷つけられ、将来のサービス拡張に大きな支障が生てしまいます。そこでITSは、弁護団の一員として訴訟の進行に携わると同時に、IT技術者と共同で不正ロジックが存在しないことの立証活動に取り組みました。結果、例外的な条件でロジックに不具合のあることは判明したものの、開発資料との突合により意図的なものではなくバグに過ぎないものであることを立証できました。その過程で、ほぼ正確な交換残高を算出する方法も見つかり、当初見積り程度の敗訴額で訴訟を終えることができました。

 ポイント  それなりのビジネスを展開していれば、何がしかのトラブルに見舞われるのは避けがたいことです。これが請求する側に立つ場合であれば、十分な立証手段があるかどうかを判断したうえで事を起こすことができますが、請求される側に立つ場合は、否応なしに訴訟等に巻き込まれてしまいます。降りかかる火の粉は振り払わなければならないわけですが、訴訟となれば、(たとえ不当な請求であっても)立証手段を欠くとそれも叶いません。本事案では、ITSは弁護団の一員として、通常の訴訟追行を担当するメンバーと立証の鍵を握るIT技術者の連節点として機能したわけですが、何より、(相当の解読作業を要したとはいえ)開発当時の資料を掘り出したことが訴訟の重大なターニングポイントとなりました。IT系の事業者には、往々にして記録化やドキュメント化の意識に欠ける傾向が見られますが、事業の拡大に伴い意識の変革が望まれるところです。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。