事例③ 第三者委員会方式のシステム監査

ITベンチャーの新規事業について、第三者委員会を組織してシステム監査を行った事例です。

 事案   IT系のベンチャー・ビジネスであるA社は、SaaSを中心としたクラウド・サービスで業績を伸ばしていました。また、そこで培った技術を生かした新規の事業分野への進出にも積極的で、2~3か月に1件はパイロット・プロジェクトを立ち上げていました。ところが、非常に有望と思われた新規事業の一つが、稼働直前になってプライバシー保護上の問題があるとの疑いが生じました。いろいろとリカバリーを試みたものの、現状の事業スキームのままでは問題を取り除ける目処は立ちませんでした。結局、実稼働は見送りとなり、投入した資金も無駄に終わりました。そこで、事後の新規事業については、第三者委員会を組織して監査することとし、ITSに法律問題についての委員を依頼しました。

 解決  新規事業は社内の有志が企画し、その事業性・収益性については当然、経営会議が会社としての判断を下します。第三者委員会はこれとは別に、経営から独立した委員会が、技術、法律、倫理の観点から新規事業を評価するというものです。委員は各分野の外部専門家(技術者、弁護士、学者)に委嘱されましたが、各領域は相互に関連しているため、委員会として相当の協議を経たうえ、監査報告書をもって会社に助言するという形が採られました。初年度は4件の監査が行われ、うち1件で技術上のフィージビリティにつき疑義が出され(他社技術の導入により回避)、別の1件で業法違反が指摘され(一部事業縮小することで回避)ましたが、ひとまず4件とも実稼働に漕ぎ着けました。

 ポイント  新規事業の企画の際は、事業性や収益性に目が行きがちですが、リスクについても慎重な判断が必要です。その点A社では、バイアスのない専門的・中立的な判断を重視したこと、会社の現有人材は現業に注力させたかったことから、外部の力を借りることにしたものです。第三者委員会は、不祥事や事故の後始末として組織されることがが多いものですが、ここでは前向きの経営課題がテーマであったため、社外への説明を意識した厳格な手続はあえて採りませんでした。協議なども極めてオープンな形で行い、適宜、会社の責任者を交えたウォークスルーも試みました。その結果、社内に外部専門家の知見や問題意識が導入されるなど、副次的な効果も得られました。

※ この事例は説明用のもので、実際の事件とは一切関係がありません。