IT法務の基本③ サービス契約

 IT系の業務委託契約としては、システム開発やインフラの敷設といった請負類型のものも重要ですが、実数として(圧倒的に)多いのは、準委任類型のサービス系の契約です。多くの場合、期間に応じた報酬体系となっており、サービス業務が提供される限りはそれに応じた報酬の支払義務が発生します。
 サービス契約の場合、システム開発契約のように、合意が不明確なままに着手されることは通常はありません。ただ、新規開発のシステムの開発ベンダが稼働後に保守を担当する場合、稼働当初は不具合の対応に追われるなどして、開発契約から保守契約への切替の時期が不明確となるといったことはあります。
 サービス遂行中のトラブルの場合、その内容や程度によっては契約を解除することができますが、あくまで将来分を解除するにとどまり、遂行済みの部分を解除して報酬の返還を請求することはできないのが原則です。ただし、遂行結果に問題があり、それに起因して損害が生じている場合は、損害賠償請求することができます。

サービス契約 TOPICS (5)

準委任契約

 準委任契約は、請負契約と異なり、仕事の完成ではなく、業務の遂行に対して報酬が支払われます。また、受託者は、瑕疵担保(契約不適合)責任のような、業務の結果に対する責任は負いません。
 もっとも、債権法改正により、準委任であっても成果に対して報酬が支払われる類型が設けられました。仕事の完成を要しない点ではあくまで準委任ですが、請負に接近するものと位置付けられます。要件定義や現状調査のような無定形の成果のある業務の委託に用いられることになると考えられます。

SLA(Service Level Agreement)

 あるサービスを提供する事業者(ベンダ)とその利用者(ユーザ)との間で、サービス契約に付随して結ばれるサービスレベルに関する合意をいいます。サービス契約におけるサービスレベルの保証水準を表したものと言え、多くの場合、この保障水準を達成できない場合の(段階的な)ペナルティが定められていることが特徴です。
 準委任のように品質に対する担保責任のない契約類型において、サービスの品質についての契約上の穴を補充する意味があります。逆に、請負のような担保責任のある契約類型のサービスに設定されることもありますが、この場合は品質基準を明確化することに意味があると言えます。

情報システムの運用・保守契約

 情報システムの開発契約と並んで、大半の企業が経験するIT契約の代表と言えます。基幹システムであれば、オンサイトで情報システム部員と協働することが多く、業務委託ではなく派遣労働に頼ることも少なくありません。
 通常は準委任契約ですが、保守の中にはプログラムの改修など、請負の性質を持つ業務も含まれるため、約定に注意を要します。また、人数、日数、時間数にどのような制約を置くのか(置かないのか)、それらと報酬はどのように連動させるのか(させないのか)、運用・保守業務の内容をどのように範囲付けるのか(付けないのか)も、重要です。

SES(System Engineering Service)

 IT業界で古くからあるサービス業務で、多くの場合、企業やプロジェクトの現場に常駐して技術系のサービス業務に従事します。サービス内容は、情報システムの開発や保守、コンサルティング、技術支援等、多岐に渡ります。
 一般に準委任形態の業務委託と位置付けられていますが、実態として委託者側からの指揮命令を受けているのではないかと疑われる場合もあります。そのような場合は、派遣法の厳しい規制を潜脱する、いわゆる偽装請負の問題となります。

SEO(Search Engine Optimization)

 検索エンジンの検索結果において、ウェブサイトがより多く露出されるようにするために行う最適化の取組みを言います。ターゲットとするキーワードの選定、当該キーワードでのランキングの上昇、クリック率の向上等を通して、サイトへの流入やサイト経由の売上といった目的達成を図るものです。
 SEOは自社でもできますが、一定の知見や手間を要することもあり、多くのベンダがサービスとして提供しています。本来は成果を保証しない準委任契約ですが、成果に目が行きがちなユーザとトラブルになるケースが少なくないため、成果と連動した報酬とすることもあります。