IT法務の基本⑤ 知的財産権
IT関連の知的財産権は多岐に渡るため、ここでは主に情報システムに係る著作権を扱います。
著作権は、著作者の下で原始的に発生します。業務委託の場合であれば、受託したベンダの側です。ただ、ユーザの側も、納入された著作物を単に使用するだけなら著作権に触れませんし、プログラムであれば自ら実行するために必要な限度での複製や翻案(ベースとなる著作物との同一性を維持しながら新たな著作物を作成すること)をすることができます。例えば、バックアップや通常の保守が該当します。
もっとも、これだけでは大規模な改修等に不自由を来たすおそれがありますので、契約により別途、使用許諾がなされるのが通常です。さらに、ユーザとしては、著作権自体の譲渡を受けておく方が、第三者への権利譲渡やベンダの倒産、その他トラブル等の際に有利です。ただ、ベンダが再委託先を使っていた場合、著作権は再委託先に発生しますので、ユーザへの譲渡の前提として、まずベンダ自身が譲渡を受けておくことが必要です。
狭義の著作権とは別に、公表、氏名表示、同一性保持についての著作者人格権があり、前者が譲渡等で解決されても、後者がベンダに残っていると著作物利用の妨げになります。ただ、著作者人格権は原著作者に一身専属の権利であり、譲渡ができないため、不行使の合意をすることが通常です。
著作権を侵害した場合、民事責任のみならず、刑事責任が問われることもあります。民事責任については、差止めや損害賠償があり、しばしば立証が困難となる損害額についての推定規定が置かれています。