IT法務の基本④ 知的財産権

 IT関連の知的財産権は多岐に渡るため、ここでは主に情報システムに係る著作権を扱います。
 著作権は、著作者の下で原始的に発生します。業務委託の場合であれば、受託したベンダの側です。ただ、ユーザの側も、納入された著作物を単に使用するだけなら著作権に触れませんし、プログラムであれば自ら実行するために必要な限度での複製や翻案(ベースとなる著作物との同一性を維持しながら新たな著作物を作成すること)をすることができます。例えば、バックアップや通常の保守が該当します。
 もっとも、これだけでは大規模な改修等に不自由を来たすおそれがありますので、契約により別途、使用許諾がなされるのが通常です。さらに、ユーザとしては、著作権自体の譲渡を受けておく方が、第三者への権利譲渡やベンダの倒産等の際に有利です。もっとも、ベンダが再委託先を使っていた場合、著作権は再委託先に発生しますので、ユーザへの譲渡の前提として、まずベンダ自身が譲渡を受けておくことが必要です。
 狭義の著作権とは別に、公表、氏名表示、同一性保持についての著作者人格権があり、前者が譲渡等で解決されても、後者がベンダに残っていると著作物利用の妨げになります。ただ、著作者人格権は原著作者に一身専属の権利であり、譲渡ができないため、不行使の合意をすることが通常です。
 著作権を侵害した場合、民事責任のみならず、刑事責任が問われることもあります。民事責任については、差止めや損害賠償があり、しばしば立証が困難となる損害額についての推定規定が置かれています。

知的財産権 TOPICS (6)

法人等における職務著作

 企業その他の法人等で著作物が作成された場合、本来はその作成を行った担当者個人が著作者ということになります。しかし、もっぱら職務により作成された成果に対して法人等が権利を取得できない(別途譲渡等の手続を要する)のは不都合ですので、職務著作の制度があります。
 すなわち、法人等の発意に基づいてその従業者が職務上作成する著作物(プログラム以外では公表名義が法人等であることも必要)の著作権は、契約や勤務規則等に別段の定めがないのであれば、法人等に発生します。なお、特許権等と異なり、担当者個人への補償金は必要とされていません。

著作権の共有

 著作権は、複数の個人や法人の間で共有となることがあります。一つは、複数の著作者による共同著作の場合です。ただ、法人内での複数の担当者による場合は、要件を満たせば職務著作となりますので、共有とはなりません。もう一つは、著作権の持分譲渡の場合です。例えば、業務委託の成果物について、ベンダからユーザに著作権の持分50%が譲渡されれば、持分均等の共有となります。
 著作権が共有となる場合でも、持分の譲渡や利用については、他の共有者の同意・合意が必要です。プログラムや設計書の共有の場合、少なくとも利用(社内利用も含みます)については強すぎる制約ですので、あらかじめ合意しておくことが通常です。

著作権の権利制限

 著作権については、政策的にさまざまな権利制限が認められています。例えば、(「自炊代行」で問題となった)私的使用のための複製、他の著作物の写り込みが避けられないの場合の利用、許諾を受けるかどうかの検討の過程における利用、正当な範囲内で引用しての利用などが重要ですが、IT関連でも、上述のプログラムの利用のほか、電子計算機による情報検索や情報解析における利用などがあります。
 また、包括的な例外として規定された「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」は、米国法のフェアユースとは意味合いが異なりますが、AI開発におけるデータ利用など幅広い場面での適用が想定されます。

著作権と秘密保持

 著作権は、著作物が公開されていても保護されますので、秘密保持とは次元を異にします。とはいえ、著作物の秘密性を確保するための手段として、著作権が用いられることが多いことも事実です。例えば、企業が他社の著作物を複製して第三者に譲渡すれば、複製権の侵害となって民事・刑事の責任を負いますから、秘密保持に一役買うことになります。
 業務委託の成果物における著作権と秘密保持の関係は、やや複雑です。著作権の帰属は法律の原則や契約により決まりますが、秘密とすべき情報(不正競争防止法上の営業秘密やNDA上の秘密情報)は、双方当事者のものが混在しています。したがって、著作権を有していても、相手方の秘密情報にはなお配慮が必要ということになります。

情報システムと営業秘密

 情報システムは著作権で保護されるのが原則ですが、不正競争防止法上の営業秘密として保護されることもあります。ただ、そのためのハードルは高く、秘密管理性、有用性、非公知性が必要です。また、情報システムの場合、そこに含まれる業務上のノウハウ、処理方法やアルゴリズム、ソースコードのような具体的な記述、といった多様なものが営業秘密となり得、それに応じて侵害が認められる範囲や使用態様も異なってきます。
 営業秘密に対する侵害があると、民事のみならず刑事の責任も発生すること、民事の責任について差止めが認められ損害賠償額の推定規定があることも、著作権の場合と同様です。

ソフトウェア特許

 情報システムの保護として最も強力なのが、ソフトウェア特許です。ただしその分、発明であること、新規性があること、進歩性があること、とハードルは高くなります。例えば資産運用方法のように、ソフトウェアの対象自体が発明(自然法則を利用した技術)でなくとも、これをソフトウェアで実現したものは特許の対象となり得ます。
 同様に、いわゆるビジネスモデルもそれ自体では特許の対象とはなりませんが、これを情報システム化したものはソフトウェア特許となり得ます。その意味で、ビジネスモデル特許はソフトウェア特許の一種と言えます。