IT法務の基本⑤ インターネット

 インターネットは、通信そのもの、取引やサービス、プラットフォームなど、様々な(しばしば従前に見られなかった新たな)活動の舞台となっています。また、そこに関与するプレイヤーとしても、地域や国境を超えて広がる各種の事業者、そして消費者がいます。
 そのため、法律関係も複雑となり、各種の法令やガイドラインへの目配せが欠かせません。
 まず、事業規制関連として、不正競争防止法、独占禁止法、景品表示法、商標法などがあります。取扱分野によっては、著作権法など知財関連の法令も重要です。
 次に、対消費者関連として、特定商取引法、消費者契約法、電子消費者契約法などがあります。改正債権法の姿勢にも見られるように、消費者保護は一段と厳しくなってきています。
 また、消費者保護とも密接に関わる個人情報関連として、個人情報保護法のほか、EUのGDPRがあります。個人データを扱うインターネット関連の活動においては、侵害のリスクも高く、特段の配慮が必要です。

インターネット TOPICS (6)

申込画面の規制

 BtoCの電子契約では、契約の申込画面について消費者保護が図られています。まず、電子契約法では、消費者の申込内容等の意思を確認する措置が設けられていない場合は、操作ミスによる契約は原則として無効となります。確認措置としては、最終的な申込みとなることが明らかに認識できる画面を設定する、最終的な申込みの前に申込内容を表示して訂正の機会を与える画面を設定する、といったことが考えられます。このような確認措置を欠く場合、特定商取引法の「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」として行政処分の対象となることもあります。
 これらの確認措置は、EC取引画面でのスタンダードとなっている感がありますが、単なるサイト内のフローなのではなく、法令の規制が背景にあることに注意が必要です。

規約と定型約款

 インターネット上のサービスなどでは、「サービス規約」といった形で取引関係を画一的に規律するのが通常です。このような規約は、個別の交渉や修正が予定されていないため、改正債権法の「定型約款」と扱わわれる可能性が高いと考えられます。
 定型約款となると、約款の事前開示や個別の合意がなくとも、一定の要件を満たせばその内容が契約に取り込まれることになりますが、不要条項や不意打ち条項は除外されます(これは対消費者の場合に限られません)。他方で、個別の同意なしに約款の改訂を行うことができるようになります。従前は、良くも悪くも合意によって処理されてきた(合意がなければならない/合意さえあればよい)契約関係に対する一大変化と言えます。

渉外取引

 海外の当事者との取引となる場合、準拠法(どの国の法令が適用されるか)に留意する必要があります。国内で提訴する(される)限り、日本法を準拠法とする合意をしておけば足りますが、消費者契約等では例外的に外国法の適用を受けることがあります。国外で提訴する(される)場合を考えると更に見通しが悪くなります。
 また、日本の事業者でもEU域内の個人に商品やサービスを提供する場合は、GDPR(EUの個人データ保護の規制)の域外適用を受ける可能性があります。たまたま欧州から注文が入ったというような場合はともかく、欧州をターゲットにウェブページを構えているなどの場合は、あらかじめGDPR対策が必要となります。

クラウドサービス

 クラウドサービスには、SaaS、PaaS、IaaSといった類型がありますが、法的には、一定のサービスの委受託関係になると考えられます。そして、そのサービスの内容・性質により、準委任(一般のサービス)、寄託(データ保管等)、賃貸借(データセンター等)、あるいはそれらの複合として規律を受けることになります。
 クラウドは、データのような重要な経営資源が外部(しばしば場所が不明な)に置かれることから、広い意味でのセキュリティが重要です。技術的な面でのセキュリティは大半のオンプレミスのシステムより上とも言えますが、そもそもの事業や事業者の継続性に不安があるケースもあり、また、通信事業者のような特別の法的規制を受けていないことから、サービス以前に事業者の選別も重要であると指摘されています。

通信事業者の責任

 掲示板やブログサービスの運営者といった通信事業者(特定電気通信役務提供者)は、自ら情報を発信する者ではありませんが、その管理者として、他者の権利を侵害する(名誉棄損や著作権侵害など)情報を放置すれば被害者から、実際には権利を侵害していない情報を誤って削除すれば発信者から、責任を追及されるおそれがあります。
 このように、通信事業者は、被害者救済と表現の自由の板挟みになってしまうことから、プロバイダ責任制限法により、それぞれ一定の免責が認められ、一定のバランス(幅)で行動する限り、責任を負わない仕組みが作られました。これと併せて、被害者が発信者に直接責任を追及する途を開くべく、通信事業者に対して発信者情報の開示を請求できるようになっています。

プラットフォーマーの責任

 プラットフォーマーとは、検索、モール、SNSなど、商品・サービスや情報が流通する基盤ないし環境を提供する事業者です。一般にプラットフォーマーは、自らは「場」の提供者にすぎず、「場」で活動する他者の行為については責任を負わないと宣言しているケースが殆どです。
 しかし、実際には、「場」のユーザー(事業者あるいは消費者)に対しても、第三者(権利侵害を受ける者など)に対しても、プラットフォームの性質や状況、権限に応じて一定の責任を負うことがあります。例えば、オークションサイトについて、欠陥のないシステムを提供する、注意喚起をする、といった責任が認められています。また、プラットフォーマーは、しばしば「場」における強い交渉力を有することから、優越的地位の濫用といった独占禁止法上の問題も指摘されています。