IT法務の基本② システム開発契約
システム開発の委託契約は、多くの場合、請負契約となります。この場合、ベンダは(システム開発という)仕事の完成義務を負い、これに対してユーザは報酬の支払義務を負います。報酬の支払は、システムの納品と引換えでの後払が原則ですが、開発資金に充てるなどの目的で、約定により、前払や中間金が支払われる場合もあります。
システム開発契約におけるトラブルとしては、まず、契約書などによる明確な合意がないまま、開発の先行着手がなされたものの、結局は折り合わずに開発中止となる、というケースが挙げられます。中止までの作業の費用負担やその前提としての契約の成否が問題となります。
開発の進行段階で多く見られるトラブルは、ユーザからの要求が契約の範囲内にあるかどうかが問題となるケースです。範囲内であれば仮にどれほど工数がかかってもベンダはこれに応じなければなりませんが、範囲外であれユーザは別途の追加発注として費用や納期の変更を受け入れなければなりません。このような場合、契約書に添付された仕様書や、開発過程でのドキュメントが重要な判断資料となります。
システム開発が途中で頓挫し、あるいは品質不良が判明する、というのが最も深刻なトラブルです。このような場合、ユーザはなお開発の続行を求めることもできますが、契約を解除した上で前払報酬の返還や損害賠償を請求することも選択肢となります。もっとも、こうした状況では逆にベンダから、責任原因はユーザ側にあるなどとして、未払報酬や損害賠償の請求がなされることも少なくありません。