中間成果と報酬支払

 システム開発委託契約の殆どは、法律上、請負契約になると解されています。これは、受託者であるベンダはシステムを完成させる義務を負い、委託者であるユーザはその完成に対して報酬を支払う、ということを意味します。つまり、報酬の点で言えば「後払い」となるのです。問題は、契約書でこれと異なる支払条件を規定した場合です。
 例えば、要件定義の終了時に3分の1、設計の終了時に3分の1、製造とテストまで終了してシステムが完成したときに3分の1、と定めたような場合です。このような場合、テストの途中で品質不良が発覚して結局システムが完成しなかったら、既に支払われた3分の2はどうなるのでしょうか。最初の2回の支払はあくまで中間金の仮払だと考えれば、システムが完成していない以上、3分の2はユーザに返還されなければなりません。これに対して、最初の2回もそれぞれ要件定義の成果、設計の成果に対する確定的な報酬だと考えれば、3分の2は返還の必要はありません。ユーザの意識では前者(欲しいのは完成したシステムであり、中間成果だけに報酬を支払ったりはしない。)で、ベンダの意識では後者(必要な労務を投入して、中間成果を納入した以上は報酬をもらって当然。)となることは、容易に分かるでしょう。
 ところが、そうした「意識」と契約書での記載には多くの場合ズレがあり、紛争に争点を一つ付け加えることになります。記載の上では、単に分割支払が規定されているだけでは、原則に戻って前者の判断になり易いですし、各回で中間成果に対する検収が予定されていれば、原則を修正して後者の判断になり易いですが、当事者の意思(これが契約内容を規定します。)は契約書の文言だけで決まるわけではありませんから、事は厄介です。
 この問題は、「システム開発の中間成果に独立した完成物としての価値があるか」ということと表裏の関係にあります。ユーザはこれを否定に解し、ベンダはこれを肯定に解するわけです。抽象的に言えば、「価値あらしめることは必ずしも容易ではないが、不可能ではない」というところでしょうが、この程度では解釈上の役には立ちません。何れにしても、契約書には、この成果と支払の関係が(当事者の意識と合致する形で)明確に規定されている必要があります。もっとも、ユーザが「中間金であっても成果について何らの確認もしないまま支払いたくない(最終的な完成が危ぶまれる場合には支払を留保したい)」と考えて確認の手続を入れたのが、却ってやぶへびとなった事例もあるくらいですから、一筋縄では行きません。