プロジェクトマネジメント

 プロジェクトマネジメントは、一定規模以上のシステム開発にとって、不可欠のものです。システム開発は、単なる設計・開発業務の集積ではなく、プロジェクト、すなわち「一定の期間内に、新たな成果物を創り出すことを目的として実施される一連の活動」なのです。このような創造性が高く、人的にも物的にも管理が難しい活動のコントロールには、それ相応の方法論が必要となります。

 ところが、プロジェクトマネジメントの問題は、契約書上、ひどく軽視されているのが実状です。少なくとも私は、プロジェクトマネジメントに関する条項が契約書の本体に入っているのを見たことがありません。スケジュールや成果物などと共に添付書類で言及されていれば良い方で、それすら欠けた契約書も珍しくはありません。モデル契約書も例外ではなく、第13条にマルチベンダの際のマネジメント責任という、やや特殊な条項があるほか、プロジェクトマネジメントに対する考慮は見当たりません。
 さすがにこのような契約であっても、実際にプロジェクトが始まり、プロジェクトの実行計画が作られるくらいの段階になると、プロジェクトマネジメントが意識され、計画、実施されるのが通常です。では、そうもならなかったら、どうなるか。実際、失敗プロジェクトの殆どはプロジェクトマネジメントの誤りに起因しますから、紛争化したプロジェクトではプロジェクトマネジメント責任の所在が激しく争われます。
 契約は当事者の合意ですから、原則論を言えば、契約書に書かれていないものは契約上の給付の対象とならない、ということになるのでしょう。いわば、「それは売り物ではない。」という理屈です。モデル契約書も、そのような前提に立っているものと思われます。しかし、十年に一度しかシステム開発プロジェクトを経験しないユーザが「責任をもってプロジェクトマネジメントをやります。」などという契約は極めて不自然ですし、実働部隊の大半を抱えるベンダは、事実上、内部管理の延長としてプロジェクトマネジメントを考えざるを得なくなるはずのものです。結局のところ、プロジェクトマネジメントについてベンダが完全な免責を得ることは、まずあり得ないのではないかと思います。
 ベンダが、もし、設計・開発はできるがプロジェクトマネジメントには自信がない、ということであれば、プロジェクトの統括責任は持たないとか、ユーザ分担の業務には責任を持たないとか、プロジェクトマネジメント責任を限定した条項を入れておくべきでしょう。そのような場合、開発代金は割安になるのでしょうが(むしろ割安にするためにそのようにするのでしょうが)、他方でユーザとしては、欠けたプロジェクトマネジメントをどのように補充するのか、十分に考えておかなければなりません。体制を手厚くするにせよ、コンサルなどの第三者の支援を受けるにせよ、結局は、コストとプロジェクト成否のトレードオフになってしまうわけですが。