IT法務の基本⑧ IT事故/事件の責任
IT事故/事件が起きた場合、その加害者の立場にある者は、一定の要件の下に法的責任を負います。一口に法的責任と言っても、複数の種類があり、要件に当てはまる限り、それらの責任を重ねて負う可能性があります。
まず、私人間の責任として民事責任があります。契約関係にある当事者間であれば、債務不履行や契約不適合を理由として、損害賠償、契約解除、差止めといった責任を負います。契約における特約に基づき、別段の責任(報告義務等)を負ったり、逆に制限(賠償制限等)されたりすることがあります。また、契約関係にない当事者間においても、不法行為責任を負います。被害者側に過失の立証責任があるため、ややハードルは高くなりますが、損害賠償や名誉回復の処分が認められます。不正競争防止法等、個別法令違反の場合の民事責任は、不法行為責任の特則と位置付けられます。
次に、刑法又は個別法令の罰則に触れる場合、刑事責任を負います。法律に規定されている法定刑の範囲内で、懲役刑や罰金刑が科されることになりますが、執行猶予がつく場合は猶予期間中に更に罪を犯すこと等がなければ刑の言渡しは効力を失います。原則として、故意犯のみが処罰の対象で、過失犯は特に規定がある場合や一定の行政犯のみ処罰対象となります。法人における犯罪については、刑罰法規に触れた個人に加え、法人にも刑罰が科されることがあります。
さらに、個別法令に基づく立入検査、行政命令、許可の取消、といった行政上の責任を負う場合もあります。通常の裁判なしに支払を命じられる過料もその一つです。